niime 百科
Encyclopedia of niime
「染めチーム」登場!〈後半〉
計算された偶然
“Dye team” appears!〈part 2〉
Calculated coincidence
計算された偶然
Calculated coincidence
2020 . 03 . 01
〈前回からの続き〉
― お話を聞いてて強く感じるのは、「無いからつくる」というところで、「染め」に関しても実に色んなアプローチがあって、「織り」にしてもそうだろうし、デザインでも、縫製でもってなると、相乗させると本当に「tamaki niime」のモノづくりの可能性って無限だなと。
渡部「例えば同じ組織でも、単純に「織り」の段階で500色の中から選んで4色並べるとして、何通りあるかと言うと…」
松本「(渡部に)計算してみて。」
岩本「読めない…。」
渡部「617億通りあるのね。4色の組み合わせで。」
― 4色並べるだけで。
渡部「4色で織った上に、更に後から部分的に染めたりしてるモノもある。」
― 染めて・織って・染める。はぁ〜…。それは誰のアイデアですか?
(渡部、岩本を見る)
― 謙遜してますね。
岩本「何かやんないと“Only One”にならないんですよ。」
― “Only One”を目指すと、自ずと新たなチャレンジになるという。
岩本「“Only One”にするために、何かやってる感じはあるよね。」
― 最初に言ってた、他所を観に行ったり本を読んだりとかも。
岩本「それはすでに世の中にあるものだから、ウチでやるとするなら、どうやったら「tamaki niime」になるんだ?っていうのは、やる上で常に考えてます。」
― なるほど。そこが肝ですよね。制限は無いけど何でもよいわけではないと。貴子さんはどうですか?
松本「難しいですよね。自分が単純にやりたいなと思っても、それが「tamaki niime」らしくないってなった時に、どう乗り越えていったらいいのかって難しくって、そこはでも皆んなに、ほかのスタッフの意見とかいっぱい聞いて、模索して行く。」
― その辺のジャッジに関しては玉木さんからダメ出しがあったり、ですか?
渡部「あんまり「染め」は言われないです。」
― 「染め」はもう放任、ほったらかしみたいな?
渡部「染めた後の“料理人”もいるから。」
― はい。
渡部「受け止めにくいボールを投げても…受け止めてくれる人がいれば、どんなボールでも。」
岩本「無責任じゃね〜??」
(皆爆笑)
渡部「だけど、受け止めにくいのを投げた結果、受け止めた時にこう、なんか、面白いモノが出来るんやな?」
岩本「そうだね。」
渡部「受け止めやすいボールばっか投げてるとさ、それ一辺倒になっちゃう。」
岩本「うん。」
渡部「だからいい意味で、受け手のことを考えずに、こっちが投げたいボールを投げる!」
― おおっ。
岩本「投げたもん勝ち、みたいな。」
渡部「そう、投げたもん勝ち!(笑)」
岩本「どっちかっていうと「染め」は作品になる前の材料を創ってる部分があるんですけど、「ウチらこんな面白い材料を染めたよ、さぁ次の人どう使ってくれる?」みたいな。」
― バトン渡した!みたいな。あと、もうひとつ、『tamaki niimeの日常』の動画で3人声を合わせてシャウトしてたフレーズがあったんですけど。
岩本「ああ、なんかそんなこと言ったな。」
渡部「…計算された偶然!」
岩本「それや!」
― あれは仕込んでたんですか?
渡部「いや全然。」
― それにしてはパッと即、3人の口から出て来たじゃないですか。
岩本「それが今の「染め」のチームワーク(笑)。」
― そうなんだ(笑)。“せ〜の”、って誰が主導したんですか?
渡部「誰も。」
(岩本・松本、渡部を見る)
岩本「謙遜されてます。」
渡部「“せ〜の”って言わないと、考え始めない人間なんで。ミーティングとかも、しゃべり始めてからしゃべること考えてる。」
― 良いですね。即興。
岩本「考えながらしゃべる。」
渡部「なんか口に出さないで考えれない。」
― “せ〜の”でスイッチ入れて。
渡部「前の日、時間がある時に明日の色を決めようとするとけっこう決まんなかったりする。朝自転車に乗って通勤してる時に考えるくらいがちょうどいい。」
― 直前にパッと。
岩本「私もそんな感じかもしれないな。」
― 根詰めてウンウンうなってアイデア出すとかじゃ全然ない、と。
渡部「そうゆうのはない。…ないよね?」
岩本「ちがう。…いざとなったらそれしなきゃいけないけどね。」
― じゃ、朝のヒラメキ重視という感じなんでしょうか?
岩本「まぁ昨日やったデータもあるし、その前のデータもあるから、そこからあれこれ眺めてて、これとこれイケルんちゃうん??みたいな。」
― これとこれ、と。
岩本「色ですね。基本は配合染色なんで、ベースの黄色と赤と青を混ぜて色をつくっていくんで、前日に染めた色がこんな色で、その前の日に染めた色があんな色ならば、これとこれ混ぜたらこうなるんじゃねぇの?ってゆう…憶測??」
― はい。
岩本「…から、これいこう!と。」
― 「計算された偶然」ってすごく面白い言葉やなと。
岩本「ある程度は、考えた上でやるけど、たぶん20%くらいは偶然性も加味して。偶然性からしか面白いモノは生まれないから。色々な手法にしても、こうやったらこんな色になったわ、という偶然から。糸をラップ巻きしてやってみれば面白い色柄が出るんでは?とか。」
渡部「偶然を起こすために、テキトーな部分を残している。」
― いわゆる“遊び”の部分みたいな。余裕というか。
岩本「遊んでナンボや!」
渡部「遊んでナンボや!!」
― …遊んでナンボですか?
松本「…はい。(笑)」
― 言わされ感あるけど(笑)。でもそうなんでしょうね。
渡部「基本…遊びが好き。たぶん人生哲学的なところで言うと、“楽しくいこうぜ。”っていう…」
岩本「それはもう、絶対的に。」
― そういう集団なんですね、「染め」チームは。
渡部「なんか、真面目なこととか辛いことが美しいとは思ってない。」
岩本「思ってはないけど。」
渡部「そこに美しさは感じないかも。そこをよく話してたね、こないだの飲み会で。」
― そこをもうちょっと詳しく。
渡部「ラクにやるためにはどうやるか。」
岩本「うん。基本、私はめんどくさがり屋なんですよ。なので、いかに作業効率を上げていくか?っていうのはある。で、いかにそこで時間をつくって、出来た時間でどうするかっていう。」
― オモシロイことやると。
渡部「急いでる時も、なんかゲーム的に楽しんでる。」
岩本「たぶん他のチームからしたら、「染め」はワチャワチャ、ゴチャゴチャしてんな〜と。」
渡部「でもそれぞれの時間の時はすごい別々で。個人の時間は。」
― それはプライベートで?
渡部「いや、仕事です。」
― 個人プレーもあると。
岩本「「染め」というチームだけど、(渡部は)英語の翻訳やったり、貴子さんは「織り」もやったり、私は「「もけもけ」を創ったり。」
― 「もけもけ」って?
渡部「岩ちゃんが創ってる手編みの丸い敷物。機械ではやれない。」
― それ、持ってます。
岩本「手じゃないと編めない。」
渡部「手編みだって知らない人多いかも。」
岩本「そうかも。編み目見えないものね。」
渡部「手編みって書いとこう!…なんか、残ったもので適当につくりましたっていうもんじゃないってことは伝えないと。」
― 「作品」だなと思います。
渡部「「ソコシキ」と並べて、手編み・手織りコーナーみたいにしたら…」
岩本「(松本を指して)手織りもやってるんですよ。「ソコシキ」っていう…」
松本「手織りのコースター。」
― あれですか。
渡部「あれ貴子さんがやってるんです。」
― そうなんだ。
渡部「松本さんの野望としてはあれをデカくして。」
松本「そうそう、おっきいラグマットをつくりたい。」
渡部「20万円くらいで売りましょう。」
松本「そうですね、それくらいがいいな(笑)。」
渡部「募集しましょうか、買ってくれる人。」
岩本「20万くらいで買いたいっていう人。」
渡部「なんかもう、直接お客さんを見つけた方がいいよね。」
松本「うんうんうん…。」
この後、松本の野望=「ソコシキ」の発展形ラグマットをどうやって販売するかの話が3人の間で延々と展開。
岩本「「染めチーム」なんだけど、こういう話をしながら発展していく。」
渡部「ああ、そうだね。」
― なるほど。
渡部「なんか、販売とかの話もむっちゃするもんね。」
岩本「そこもするけど、結局、ウチら「染め」やったよな、っていう(笑)。」
渡部「釜回さなくていいなら売りに行くっていう。」
― 機械操作による時間的な制約はあるけど、「染め」に止まらずにアイデアはどんどん出て来るわけですね。
渡部「逆にヘンなモノを自由につくるためには、売るところまで考えないと。つくっても在庫になるってなったら、結局どんどんつくれなくなって自分たちに返ってくるから。」
― 販売までトータルで考えると。
渡部「特に「染めチーム」の企画による「染め遊びシリーズ」ってゆう、染めで遊んだ作品も出しているので。けっこう過激です。」
― お話を聞いてるとすごくアートな感覚も感じるわけですが、もちろん最終的に作品として、売りモノとして成立させるわけですけど、感性を遊ばせているというか。
岩本「私はアート好きだから、そっちから発想を持ってくることはあります。他の工場で出来ないアプローチが色々と出来るのは自社完結だから。」
― では最後に、皆さんそれぞれ今後の抱負などお願いします。
渡部「岩ちゃんが最後染めて、いや、締めてくれるから…」
― では貴子さんからいきましょう。
松本「私はさっき話に出たラグマット。手織りで大っきいモノを創ることです。そこに3月に入ってくる天然染料も絡められたら良いなと。」
渡部「天然染料は服じゃないモノの方が面白いかも。」
松本「私もそう思ったの。服だと色落ちとか変色とか気になるかもだけど。…お知恵を拝借。」
― 渡部さんは?
渡部「「すくも」です!」
岩本「喫緊の課題やな。」
渡部「「すくも」をつくって「本藍染め」。化学物質を全く使わずに染める。藍染めといえば比延町、くらいになるように。」
岩本「おお、デカく出た〜!」
渡部「そうゆうことでしょう?だって。西脇の比延地区で育てた藍を使って。」
岩本「さすがです!」
― 藍を育てるところから始まって。
渡部「すでに去年から試験的に自社で育ててるんです。収穫もしてみて。「すくも」をつくって、それを岩ちゃんに“料理”してもらう、と。」
― では、「染めチーム」の今後の抱負、最後岩本さん締めてください。
岩本「遊ぶ!」
― そのひと言?
岩本「遊び続ける。そのための時間をつくって遊ぶ。」
― とにかく“遊ぶ”と。
岩本「なんか、“遊ぶ”って言ってた方が自分的にラクかな(笑)。」
渡部「なんか、“やんなきゃ”はシンドイよね。」
岩本「逆に…“遊ぶ”というのが鎖かもしれない??」
渡部「遊ばなきゃならない!とか(笑)」
― “仕事”してちゃダメ!とか(笑)。
松本「エーッ!」
渡部「すんません!」
岩本「楽しい時間は、遊びながら創造し制作していくのが一番です。」
渡部「楽しくね。」
岩本「また飲みにいこう。」
松本「はい!」
― 「飲みにいこう。」が締めの言葉ということで。
書き人越川誠司
“Dye team” appears! (part 2)
Calculated coincidence
2020. 03.01
——I was very impressed with the fact that you make items because “the desired products don’t exist on the market.” You have many approaches to “dyes”, “weaving”, “design” and “sewing”, which makes tamaki niime’s creation process limitless.
——By just arranging 4 colours.
——You dye, weave, and dye again. Wow! Whose idea is that?
(Watabe looks at Iwamoto)
——She is being humble.
——Aiming at making the “Only one” motivates you to challenge yourself, right?
——As you previously said, you also go to see other places or read books.
——I see. That’s the point. There is no limitation, but it doesn’t mean anything is ok. What do you think, Takako (Ms Matsumoto)?
——So, when deciding if your ideas are ok or not, would Mr Tamaki call you out?
——Does she leave the “Dye team” alone?
——I see.
(Everyone laughs out loud)
——Wow.
——You pass the baton! And one more thing, there is a phrase you all shouted together at “tamaki niime’s daily life” on YouTube.
——Was that planned?
——Wow, how did all three of you come out to say it all together?
——Is that so? (laugh) Who led that phrase?
(Ms Iwamoto and Matsumoto look at Watabe)
——That’s good. You perform on the spot.
——You can be ready to switch on by saying “Set to go”.
——Right before the presentation.
——You don’t get the ideas long after studying or thinking, right?
——So you depend on your inspirations in the morning.
——This and that?
——I see.
——“Calculated coincidence”. What an exciting phrase!
——It looks like a part of the “play”, but might really be something extra.
——You would get something beneficial out of “play”?
——It sounds like you are forced to say it. (laugh) But I think it is true.
——Your “Dye team” is fun, right?
——Will you explain to me in more detail?
——How to make it fun?
——You mean private time?
——Do you work individually?
——What is Mokemoke?
——I have one.
——I think they are art products.
——Are those ones?
——Is that so?!
——After this, they kept talking about how they make the developed style of “Sokoshiki”, Matsumoto’s large rug mat sell.
——I see.
——You have limited time to use the machines, however your work is not limited to “Dye”. You have so many ideas beyond that.
——So you think about a whole picture all the way up to sales.
——From your comments, I have my impression that you are very artistic. I understand your focus on the products to end up on the market, but you enjoy letting your feelings flow while you create.
——Then, finally, I would like to ask your wishes and desires for the future.
——Shall I ask Takako, first?
——Mr Watabe, how about you?
——You start with growing Indigo.
——Then, Ms Iwamoto, would you conclude with your goal for the “Dye team”?
——Only one word?
——You want to play somehow, right?
——Or you must not work. (laugh)
——You concluded your comment, “Let’s go drinking!”.
Original Japanese text by Seiji Koshikawa.
English translation by Adam & Michiko Whipple.