niime 百科
Encyclopedia of niime
tamaki niime マスク屋宣言の意味
〈前半〉
tamaki niime, the meaning behind announcing of making masks
〈part 1〉
〈前半〉
〈part 1〉
2020 . 04 . 15
― 「ショール屋やめて、マスク屋になります!宣言」がありました。
玉木「うん、4月1日ね。」
― これは新型コロナウィルスに脅かされている今の状況に「即対応」している印象を受けたんですけど。
玉木「私たちにしては、だいぶ対応遅かったんですけれどもね。」
― そうですか。
玉木「1月30日にマスクの試作品つくったのかな?」
― それは早かったですよね。
玉木「そこから考えると…」
― 多少悔いがある感じですか。
玉木「もうちょっと準備出来たかなっていう、自分の中での後悔は多少ありますけど、結果的にはこのスピードだったのかなという感じですね。」
酒井「まあまあ早い段階から、マスクに切り替えろ、とは言ってたけどな。」
玉木「去年一年間、色んなことで私たち動いたんですよね。CAMを導入したりだとか、外部の縫製屋さんを新規開拓するとか、他の産地のモノとやってみるとか、色んな試みをやろうとしててまだ実行にまでは至ってなかったことが多かった中で、今回のマスクによって、すべてが動き出したの。」
― 色んな試みがマスクづくりに収斂されたと。
玉木「だからマスクづくりのための準備段階やったって感じやね。」
酒井「うん。」
― 結果的に。
玉木「その時にはわからなかったけれど、何かこうした試みをやらなければ、というのが自分の中ではあったんですよね。」
― 以前から、「いざという時の“駆け込み寺”でありたい」という発言がありましたよね。そういう危機意識というのが、早くから玉木さんの中で芽生えていたのを感じてたんですが。
玉木「2011年の東日本大震災の、あの時からですよ。あれから“備え”という意識で準備してきたことが、このタイミングだったんだっていう。まだスタートしたばかりに過ぎなくて、これから世の中変わると思うんですよね。それに順応できる人間をちゃんと育てられるか?というのをずっと想ってたじゃないですか。やっぱり、“平和”な時には変われないんですよ、人って。」
― う〜ん。
玉木「どんだけ口で言っても、圧をかけても、だって大丈夫やもんっていう、安心感みたいなものがあるから…そうゆう意味では、あ、スタッフ皆んな変わってきたなと思う。私が普段から言ってることの意味がちょっとわかってきたかな、というか。本当に自分のことは自分でやらなきゃ、誰かに決めてもらおうじゃなくて自分で考えて自分で決めなきゃダメだってことが、なんとなく、これだけ変動したから余計に、皆んな気づけている気がする。」
― はい。
玉木「今朝の朝礼で何の話をしたかというと、今回の緊急事態宣言に対してどうやっていきましょうという話も多少しましたけど、結局…もし経済が止まった時に、どうやって生きる?っていう相談をしたの!」
― もしも極限状況になったらと。
玉木「イノシシ獲りに行く人!とか、魚派の人!とか、手を挙げてもらったら、私は魚!とか言って(笑)。じゃ私はイノシシ!、いや私らは野菜育てます!って、じゃあこれなら食べていけるから大丈夫だねってことを話し合ったりしたので。なんか、そこまで振り切って考えておければ、どんな状況が来てもたぶん生きていけると思うんですよね。もちろんそんな時代がすぐに来るとは思ってはないけど、最悪の場合ありうる、っていう想定の中で生きた方が、柔軟に動けると思うから。そんな時代やね、今。」
― …。
玉木「これが一年前に同じこと言ったら、また社長アホなことゆうてまっせ、と思われてただろうから。そんな時代来るわけないじゃん、て。」
― ほぼ予言者みたいになってますね。
玉木「そうそう(笑)。だからゆうてたやん、“戦争”がやって来るって。」
酒井「ずっと言ってたよな。」
― なんというか…危機意識って、“前倒し”の感性じゃないですか。
酒井「そうですね。」
― そこがずば抜けてるというか。
酒井「玉木がでしょう?」
― いや酒井さんも。その“予知能力”みたいなものが、新しいことを始める時の起点になるという気がしたんですよ。
酒井「いよいよ何か…今まで既存のアパレルが主流で、僕らみたいなやり方って、マイノリティやったじゃないですか?もちろんそれなりにビジネスとしてはイケてたけども、でもマイノリティで。なにかそれがようやくマジョリティになりつつあるというか。だから僕としてはある意味スタートなんかなっていう風に思うんですよね。一回リセットされて、色んなことがリニューアルされて、何か良い意味でのリスタートがきれるんじゃないかなと。」
― その捉え方ってすごくポジティブだと思うんですけど、そんな風に発想ができる人がこれからもっと増えれていけば、世の中すごく変わる気がします。
酒井「そういう人がもっと増えれば、いま経済が大変って言われてますけど回って行くし、止まることはないと思うんですよ。で、この業界でいえば、他社に外注で無茶依存してるわけではなく、僕らは自社で完結してるからこそ、いまマスクを創って販売したり、こうゆう状態でいれるだけで。これから淘汰も進むと思いますけど、今後は自分で何かを創り出せる人はすごい強いと思いますね。そうゆう人たちで経済が回って行くんじゃないかと思います。」
― はい。
酒井「僕らは今マスクを創っていて、もしかしたら終息した後は再びショールを創っていくかもしれないし、何を創っていくかわからないですけど。ようやくそういう時代になったんじゃないかと。」
― 何かこう、あらかじめ「構え」が出来てる感がありますね。何がどう来ようが受け止めて返せる、みたいな。
酒井「(玉木に)結果的にそうなってたよな? 自分らがやりたいことをただやりたいようにやってきただけなんやけど。まずかつては時代の趨勢に逆らってたから、何の評価もされなかったし。その後もメシを食っていけるようにはなったけど、メジャーかといえば全然マイナーやし。それが今になって…」
玉木「私はこれが正しいってずっと思ってたよ。」
酒井「いや正しいけど、今になってようやくこれまでやってきたことが、ほんとに活きてるなって。」
玉木「10年スパンなんだって。そうゆう流れって。」
― でもtamaki niimeのやってることって、10年っていうタイムスケール感じゃなくてすごく幅がある気がしますね。
玉木「まあ10年と考えてモノづくりはやってないもんね。」
酒井「考えてないよな。逆にでもそういうタイムスケール感って、良い意味で無い気がするよな。もともと僕ら流行がどうのこうの関係ないし、そもそもそういう流れから逸脱してたんで。」
― なるほど。
酒井「だから…ある意味すげーフレキシブルに動けたし。だから今回もフレキシブルにマスクづくりにシフトが出来たし。」
玉木「ブランド立ち上げて最初の5年は、あんまり頭で考えるよりは直観を優先させてたんですよね。自分が創ってみて感覚的に良いと思えるモノだけを創ろうと。それが組織になってスタッフに指示しなくちゃいけないとなった時に、直感で動けなくなったんですよ。ちゃんと考えて結果まで導けることを伝えないとその場その場の直感を伝えるだけでは伝達にならないからと。」
酒井「理解できないもんな。」
玉木「ちゃんとプラン立てて伝承しなきゃと思ったけど、全然そこがチグハグでうまくいかなかったジレンマがあって。それがここ最近になって、あ、「育てよう」とするんじゃなくて、「勝手に育つ」という状況を創るべきなんだと気づけた。まずは自分がやってみると。そうやって、まず自分のことだけを考えようとやり始めてからは、色んなことが回り始めた気がする。そのタイミングも、考えてみると結局今やったんやと思う。当時はずっと苦しかったし、何で上手いこといかへんねん、って思ってたけど、結果的にはそれがあったから、自分が考えたことを自分でやって、皆んながそれについてきてくれればいいんだ、ってやり方に持っていけた。その姿を見せて一緒に体感することで、あ、そういうことかって理解してってくれれば結果、人は育つんだって。アタマから入るんじゃなくて、体感から入って感覚で習得していくって方が良い、昔の職人さんが口で説明するんじゃなくて目で盗め、と言ってたのは、それだと。」
― 言葉でマニュアル的に伝えようとしても、どうしても“誤差”って出てきますよね。
玉木「出てくる。そこにズレがあったんだってこと。効率考えると、わかりやすくシンプルに、ってなってたんだけど、やっぱり手間でも体験で学ばせるが大事だって思った時に…この状況がやってきたから、より学びやすくなったというか…だから、私たちの目的は人を育てることになってたじゃない?」
酒井「やっぱり、ロジカルってゆうか、論理的な教え方のデメリットっていうのは噂と一緒で、AさんからBさん、BさんからCさんへと…」
― ズレて伝わると(笑)。
酒井「そうなんですよ。」
玉木「真逆の覚え方してる時があるからね(苦笑)。」
― やはり“丸ごと”を体得すると。
玉木「そう、だからウチの作品とかって特にそうじゃない?状況によって全くモノが変わるし…」
酒井「逆に直感的な言葉で伝える方が、アバウトに言ってるようでいて、良いところに着地するんですよ。」
玉木「なんだろう?と思うよね、その辺は。」
〈つづく〉
世界規模での新型コロナウィルスの流行によって刻々と変化する今の状況。日々臨機応変な対応が求められる中、従来のマニュアル式のやり方ではこれからの時代立ち行かないのでは…との危機感を強くする。
「自分で考える」人材を育てることに重きを置き続けた玉木。そのことの持つ大きな意味が、いま露わになった感が。時代を読むというよりも、時代に先駆けるtamaki niimeの歩み。これからの時代の「遊び」のあり方を巡って玉木と酒井=2人のトークがさらに白熱する次回もどうぞお楽しみに。
書き人越川誠司
—— You have announced that you quit making shawls, but started making masks!
- Tamaki
- Yes. I did on the first of April.
—— I understood it was the quick response to the threat of the current Coronavirus situation.
- Tamaki
- We feel it was not fast enough.
—— You think so?
- Tamaki
- I believe we made the first mask sample on the thirtieth of January.
—— That was pretty fast, right?
- Tamaki
- Yeah, but we should have been faster, considering that date.
—— Do you have some regrets?
- Tamaki
- I do a little in that I should have prepared more, but overall, I think this is the quickest result we could get.
- Sakai
- From the earliest stage, I suggested we should change to making masks.
- Tamaki
- We tried many things all of last year, such as having a new machine CAM; continued development to find new sewing shops, and outsourcing to other places. We tried to do many things, but we couldn’t make it for most of them. After making masks, however, it seems everything has started moving in the right directions.
—— All your efforts and trials have been accumulated into making masks.
- Tamaki
- So it looks like the preparation stage for making masks.
- Sakai
- Yeah.
—— You could say that as a result.
- Tamaki
- I didn’t know precisely during those days, however, I think I had it on my mind that I needed to try something like this.
—— You commented in the past that you had a wish to be the one for someone’s emergency. I acknowledged from the beginning that you had to recognize the need for risk preparedness.
- Tamaki
- Yeah, since 2011, when we had the Great East Japan Earthquake. I have been preparing myself with my intentions, which provides us with this excellent chance to help others. We have just started doing this, but I know the world will change from now on. One of my wishes has been on raising people who could adjust themselves to have this preparedness mentality. People wouldn’t change in “peaceful “times.
—— Ummm.
- Tamaki
- Even if I warned my staff or pressured them, they didn’t care because they have lived in relative security. But such things they have become used to is changing. They are beginning to understand what I have been warning them about. They are awakening themselves to the possibility that they have to take care of themselves responsibly, and not rely on someone else. I think there are significant worldwide changes that will make us more aware of ourselves.
—— I see.
- Tamaki
- What we spoke on during this morning’s meeting was how we cope with our lives in this Declaration of Emergency and also discussed with our staff about how we would make our living if the economy stopped.
—— What we would do if we were in a limited state?
- Tamaki
- I asked them what way they would choose, hunting hogs or going fishing? Some raised their hands for fishing; (laugh) some for hunting; others to grow vegetables, and in such discussions, I told them that they would have no problems to survive. I think if they prepare for the worst situations, they would be able to survive in whatever bad situations that would come. I am sure such conditions wouldn’t come soon, though, knowing the worst scenario would make us flexible enough to move on to become ready when it happens. I think we live in such times now.
—— ……
- Tamaki
- If I did talk about it a year ago, they would laugh and say “You are talking about silly things. Such times would never come.”
—— You became like a prophet.
- Tamaki
- You are right. (laugh) That’s why I have been saying that wars would come.
- Sakai
- I remember you have been saying that.
—— What can I say…..Risk Awareness is the sense of doing things ahead of schedule.
- Sakai
- You are right.
—— That’s an incredible point.
- Sakai
- Tamaki is incredible in that sense, right?
—— Yes, you, too, Mr Sakai! I feel you two have the ability to predict, which inspires you to get the ideas to start something new.
- Sakai
- You know what? The existing large apparel companies have been holding the leading shares, and we were one of the minorities in this apparel industry. Still, our products have been favoured in this market, and now we are getting ready to be one of the major companies. And I feel this time we could start anew in a sense. I believe this time would give us an excellent chance to reset and renew many things, and we could restart our business in a proper light.
—— I think your way of thinking is very positive. The world will change if we have more people like you who could think more positively.
- Sakai
- I think if we have more such positive people, the economy is pretty bad though, it would keep working, and never stop. As far as talking about this industry, we do not wholly depend on other companies by requesting orders. Because we could do the whole process in our company, we can survive by making masks and selling them in this situation. I think we will choose more of what we need most from now on, but I believe the people who create things through their own strength would be able to move forward. They may keep the cycle of our economy going.
—— I see.
- Sakai
- We are making masks now, but when this Coronavirus is over, we may make shawls again. We don’t know what we are going to make in the future, but I could say we will be living in an uncertain world.
—— I feel you are ready for the future in advance, that you could respond to whatever situations you may have.
- Sakai
- (speaking to Tamaki) We ended up being like this, right? We have been just doing whatever we wanted to do against the flow of time, which wasn’t well-received. After that, we managed to survive, but we were one of the minor companies, not in the major market. But now, we became highly evaluated.
- Tamaki
- I have believed what we have been doing is right.
- Sakai
- I knew we did right. The things we have been doing finally works now.
- Tamaki
- They said such business current is said to have a 10-year life span.
—— I don’t think what tamaki niime has been doing is for only 10 years. It has a broader vision.
- Tamaki
- Well, we don’t make things in just consideration for a 10-year life span.
- Sakai
- No. We haven’t made considerations for such time scales. We don’t have that idea in a positive sense. Basically, we are not interested in following trends. We originally stray from trend fashions.
—— I see.
- Sakai
- That’s the way we could work flexibly. This time we could shift to making masks flexibly, too.
- Tamaki
- For 5 years after we started this brand business, we focused on our inspirations rather than thinking logically, because we wanted to make things to fit our feelings. But after the company became a big organization and when we needed to teach our staff, we were not able to just depend on our inspirations. Only instructing the staff to follow our motivations was not enough, so it was necessary to teach them to think logically and guide them towards the results.
- Sakai
- No, they couldn’t understand it.
- Tamaki
- I knew I had to make plans and instruct them, but I was frustrated because I couldn’t make it work well. Recently, I found out I should create an environment for them to be able to learn naturally, not by focusing on them to teach them. At first, I showed them my examples by just thinking for myself and doing it my way. And then, it seemed things got better to work out. After all, the best time for them to learn is right now. In the past, I was struggling as to why it didn’t work well, but when I think back, which struggles helped me change my mind to see the big picture, that they could follow me after I showed them my examples in creating my ideas and making them. As a result, I understand showing my examples and experiencing it together helped them learn and grow. Old craftsmen teach us to say, “Steal skills by eyes, not by mouth”. It is better to learn by your experiences first, not just from the logic in your head.
—— There are gaps that come out in what you want to teach people when you just tell them about it.
- Tamaki
- Surely there are. There were gaps. Teaching them effectively, I understood that instructing should be easy and straightforward. Thankfully, the real learning opportunity came this time, when I thought it is essential to teach them through experience, which may take more effort and make difficulties, though. By having this experience, it is easier for them to learn. Our purpose was to help people to grow, right?
- Sakai
- I knew the disadvantage of logical thinking is just like having rumours, telling a person A to a person B, and a person B to a person C…
—— There is a factual gap that conveys slightly different information.
- Sakai
- You are right.
- Tamaki
- They sometimes misunderstand the concepts. (a bitter laugh)
—— They need to have experiences with the concepts.
- Tamaki
- That’s right. Specifically, we change our products from situation to situation.
- Sakai
- Telling instinctively may sound vague, but it would give them good points to understand.
- Tamaki
- That would make you wonder or amazed.
(continued)
Due to the Coronavirus pandemic, the situation changes minute to minute. We feel a greater sense of crisis in which our old manual ways won’t work from this point forward, and the flexible responses to the current conditions are needed every day. Ms Tamaki has been focusing on helping people to be “independent mentally”, that her policy of raising people has exposed to be meaningful at this time. They are not reading the times, but rather walking ahead of them. Please look forward to Tamaki and Sakai’s passionate talk, discussing “How to play” in life going forward..
Original Japanese text by Seiji Koshikawa.
English translation by Adam & Michiko Whipple.