niime 百科
Encyclopedia of niime
tamaki niime マスク屋宣言の意味
〈後半〉
tamaki niime, the meaning behind announcing of making masks
〈part2〉
〈後半〉
〈part2〉
2020 . 05 . 01
〈前回からの続き〉
玉木「だから…今の新型コロナ禍の状況からどっちに向かうのかな?って。賑わうこと、イベントだとか、人が集まることがダメって言われてるじゃない?それが取り上げられたことでその大切さに人間が気づいて、エンターテイメントとしてしっかりと機能させていこうとなれば良いけど、今の流れだと、もう会わないで集まらないでいきましょうとなりつつあるじゃない?人と人の距離を離して、もうネットで全部繋がれるよ、というのを助長しているようにも感じるの。」
酒井「俺は全然違う解釈で、エンターテイメントの楽しみ方って基本、“個”じゃなくて“集団”じゃないですか。群れることでエンタメが成立してて、それが今ダメって言われてるわけでしょう?」
― う〜ん…。
酒井「でもなんか、そもそも、僕が外でボーッとすることにだって、そこにはエンターテイメントの要素って沢山あって。だからこれからは、“個”によるエンターテイメントが、より洗練されていくと僕は思うんですよね。その重要性を皆んながもっと認識し始めれば…」
玉木「だから、“群れる”ことで依存し合っているのをなくすってことか!」
酒井「そうそう。」
玉木「それはわかるかも。」
酒井「結局そうねん。いわゆるエンターテイメントって、究極の“依存”やからさ。それじゃなくって、もっと“個”が…」
― 一人遊びみたいな。
酒井「そうなんですよ。僕らが前に話してたような一人遊びであるとか、もっと自分でできること・自分で感じれることとかに、もっと敏感になれると思うんですよね、既存のエンターテイメントから離れることによって。」
― いわゆるエンタメって、与えられたものであると。
酒井「そうそう!そうなんですよ。」
玉木「ある意味“洗脳”やもんな。」
酒井「そうそう、洗脳。」
― そうじゃなくて、自らエンタメを生み出す!みたいな。
酒井「そうそう。」
― それぞれ一人一人が…
玉木「生み出すエンタメやな。」
酒井「そう。エンタメって日々それぞれにあるものやから。」
― なるほど。
酒井「これまでは大掛かりなエンタメが必要と思われてたわけやけど、そんな小さなエンタメを、ひとりひとりがどれだけ積み重ねられるか?というだけの話であって。だから今回の新型コロナの影響で、ある意味、皆んなが原点回帰出来るといういい機会になったんじゃないかと思うんですよね。」
― “遊び”の原点に戻ると。
酒井「もともと僕はひとりでボーッとするの好きやし、ひとりでモンモンと考えるのも好きやし、別に皆んなで群れてワァーッとならなくったって、全然自分ひとりでも高揚出来たし。」
― そうゆう意味で言うと、今の子どもたちがこの時代にどんな遊びを発明するのかも気になります。
玉木「この、1ヶ月間何もしちゃいけませんの中で、何を生み出すかですよ。」
― 何やって遊ぶ?みたいな。
酒井「うん。」
玉木「そう。家の中にいなきゃいないという状況で…でも絶対子どもたちって…ねぇ?」
酒井「すっげぇいいことやん。型どおりの教育からこれを機会に離れられるんやから。」
玉木「で、学校の存在意義がなくなるかもよ?」
酒井「だから…3月にウチの甥っ子を玉木は山形出張に一緒に連れて行って、ほんとにもう、色んな経験を“実地”でさせたやん?」
玉木「うん。楽しかった。」
― 日本の森と水源を守る活動をされてる「あらえびす」さんを訪ねたんですね。
酒井「ウチの甥っ子って野球とかもやってるけど、どっちかってゆうとYoutubeでアニメ観たりだとか、いわゆるそういう俗世間のエンターテイメントに依存してたけど、原点みたいな、人里離れた山の方へ…高揚の仕方、歓び方が違うよな?」
玉木「そうだね。本能を刺激されてたよね。」
― 与えられたもので遊ぶというのは…
酒井「絶対おもんない。」
玉木「そこでお会いした方に言われて、あ、そうかと思ったんだけど、大人が愉しんでるかが一番大事だって。確かに子どもより私の方がテンション上がってたもん。」
酒井「そうなん?」
玉木「やったーッ!とか何これスゲーッ!!ってなってるから、そうか、その歓ぶ感情を表へ出すっていうお手本が必要なんだなって思った!」
酒井「うん。」
玉木「山形の空港で飛行機降りて、「やまがた」って書いてある看板の前で私が両手広げてジャンッ!とかポーズとったりして。で、一緒にやって。こっちがやってるからそりゃジャンッ!ってやるやん?でもそこで大人がちょっと写真撮るから前に立ちなさいって言うとただ単に立つだけだと思うねん。」
酒井「そうやって考えるとやっぱ、小さなエンターテイメントがそこには確実に存在するやん。それで自分が愉しいかどうかやん、極論さ。」
玉木「それは旅先での出来事だったにせよ、今日という日をどうやってエンタメに出来るか?やん。」
酒井「そうそう。」
― そこで別に他人の顔色を伺う必要もない、自分が愉しく感じる気持ちが大事だと。
玉木「人の目なんてどうでもいいもんな。」
酒井「そうそう。で、ようやく“個”であることの重要性というか、そこにフォーカスが当てられる時代に突入したかなと。」
玉木「なんか、全人類が同時に気づけるタイミングなのか。」
― そこでtamaki niimeの掲げる一点モノのモノづくり、「一点モノ量産主義」の持つ意味合いもすごく出て来る気がしますね。一点モノの作品と個人、一対一ということで。
酒井「これからどうなるのかわかりませんけど、ようやく僕らの時代が来たのかなと。」
玉木「…なかなかシンドイで。そうは言いますけど。会社っていう組織を…これが私ひとりなら、よし来いと思うけど、これで組織背負って立つの、なかなかよ。」
酒井「そこをまぁ、楽観的にさ。」
玉木「もちろん愉しんではいるし、なるようになるなと思ってるし、悲観的ではないけど。」
― さっき2階で「タマスク」の問い合わせの電話を取ってるスタッフの皆さんを見てたんですが、そのお客様との一対一の対応をする姿がすごく素敵だなと。
玉木「うん…。」
― 単に注文を聞いてるのではなくて、色んなお客様の事情も聞いたりだとか…。
玉木「だからそうよ、ウチのお店も電話で注文受けるし、何だったら画面で写してヴァーチャルショッピングとかもやろうかと。」
― 良いですね。
玉木「結局家に閉じ込められて“個”になって淋しい人たちってけっこう出て来るから、ただshopでリアルにお客様に会うことだけじゃなく、そこでなんか出来ることあるよね、と。」
酒井「確かにこれまで群れるエンターテイメントに依存してた人がいきなりポツンとなったら淋しいかもしれない。」
玉木「孤独になっちゃう。」
酒井「うん…。」
玉木「そこに対して私たちが出来ることっていうのは柔軟に考えていこう、と話してて。単にネットショッピングでどうぞって言っても、年配の方からは使い方わかりません、って言われるじゃない?」
― リアルな場に触れたいひとに向けて、「タマスク」を受注している現場をYoutubeで見せると。
玉木「そうそう、今のマスク屋の現状を公開!それをやんなきゃいけないんだよね。」
― それすごく良いですね。
玉木「いま来れないからね。こっちから発信してあげるのがひとつ大事だろうなと。」
― こうやって話してると、図らずもこの状況で、すごくtamaki niimeのコアな部分が露わになってるというか。
玉木「いやホント、一体感が生まれた。だから皆んなテンション高いの!危機的な状況が来て皆んなキュッとひとつになるみたいに。やっぱり今回の新型コロナの騒動は皆んな不安を煽られてるし、目に見えないからどうなってるかわからないっていう…まさに不安。」
― すごい“学び”の機会だという捉え方もあるでしょうね。
玉木「皆んな考えろと言わなくても考えてくれるみたいな。」
― どうやっていくか、考えざるを得ない。
玉木「考えざるを得ないっていう状況になったから…だからこそ実験もやりやすいし、トライ&エラーも数を打てるよね、今はね。」
酒井「うん。」
玉木「やってみてダメだったら違う方法、違う方法をどんどん試すみたいな。」
― 冒険が出来る。
玉木「出来るね。…もちろん私が頭の中で描いてるシナリオってひとつじゃないから、どんなことが来ても、その場その場、直感で答えを出そうと思ってるから。いまマスク屋になるなんて1年前には全然考えてなかったし。」
酒井「うん。」
玉木「でも、半年前に、ショール以外の“なにか”を創るってスタッフには言ってるんですよ。100年続ける私たちのモノづくりにおける“なにか”をやるっていう宣言はしてて。」
― いよいよ予言者ですね。
玉木「そう(笑)。それで皆んなで考えよう!って言ってたんやな?」
酒井「うん。」
玉木「その時の宣言が皆んなの頭に焼き付いていたからこそ今回、マスクを創りませんか?っていう意見も上がって来たんだと思うし…(酒井に)それはやっぱり、なるべくしてなってるっていうかね。ねッ!」
― う〜ん…。
玉木「だから面白い。そういう意味では、あ、そうそう、これがやりたかったんだって気がする。準備してきた甲斐があったなとは思う。フル稼働でほんとに皆んながひとつになれてるし。」
酒井「うん。」
玉木「またこのタイミングで、ムッチャ忙しくて全然「タマスク」の数が創れてなくて人手要るわと言ってたところに緊急事態宣言が出て、百貨店全部販売ストップになったから、スタッフが皆んな帰って来てくれて。」
― ああ〜…なるほど。
玉木「人手が足りてなかったのがこれで少しは回るなってなったから、時代が背中を押してくれてるよね?」
酒井「うん。」
― 受け止め方ひとつというか…なにか、良い方向へと転がって行ってる感がありませんか?
玉木「そうなの!」
― 同じような状況に直面してても、物事の受け止め方によっては、すごくポジティブな方向へと展開していくことも可能だということでしょうね。
玉木「だから、誰もがそう成りうるっていうか。新型コロナを想定してすっごい対策してきたからこうなってるという訳では全くなくて、ほんとその場その場の…どっちの方向を選ぶか、その判断の積み重ねで。それがほんとリアルだから…面白いよね?」
酒井「面白い。」
書き人越川誠司
〈continued from the first half〉
- Tamaki
- I wonder which direction we will go after the Coronavirus pandemic. All events with crowds or gathering are banned, right? With these events being taken away, it would be good if we could be aware of the importance of such events and make efforts to maintain the entertainment value. However, in this current world, we should not gather, right? It creates distances, and I feel they make excuses that it is okay because we could still connect with the internet.
- Sakai
- I have a totally different opinion about it. Basically, entertainment is enjoyed not by individuals but in groups. Gatherings enable us to enjoy spectacles, but now they are banned, right?
—— Ummmm…..
- Sakai
- You know what? Even daydreaming outside by myself, there are many aspects of entertainment. I believe we will refine our own enjoyment from now on. I hope everyone becomes aware of its importance.
- Tamaki
- You mean we shouldn’t depend on others when it comes to “gatherings.”
- Sakai
- That’s right.
- Tamaki
- I understand that.
- Sakai
- After all, entertainment can be extremely “dependent”, which we shouldn’t rely on. We need to seek something more “individual” …
—— So more like solitary play?
- Sakai
- You are right. Being away from existing entertainment, your own play that we mentioned before, or the things you can create by yourself will help you feel more sensitive to what you really think.
—— Generally speaking, entertainment is passive.
- Sakai
- Right. You are absolutely right.
- Tamaki
- They make you brainwashed.
- Sakai
- That’s right! They brainwash you.
—— That’s not what we need. What we need is the means of producing your own entertainment.
- Sakai
- You are right.
—— Each one of us needs to.
- Tamaki
- We should have entertainment on our own terms.
- Sakai
- Yeah, because we have entertainment in our daily life.
—— I see.
- Sakai
- Before this we believed that we needed big entertainment, but the actual matter is on how much small enjoyments we could find in oneself. That’s all. In this coronavirus environment, it may give us an excellent chance to see us going back to our roots.
—— Going back to your roots of “play”?
- Sakai
- Basically, I like pondering and doing nothing to relax. I didn’t need to gather in the crowd because I could be excited and enjoy time by myself.
—— In that sense, I wonder what kind of fun children today would invent.
- Tamaki
- What would you create during the time that we are restricted from doing anything in a month?
—— Like what would you choose to play?
- Sakai
- Yeah.
- Tamaki
- Yeah, in the limited conditions to be in a house but children would absolutely…
- Sakai
- That would be absolutely great for them. They have an excellent opportunity to be away from the ordinary education.
- Tamaki
- They may lose the necessity of school existence.
- Sakai
- So, Tamaki took my nephew to Yamagata on her business trip in March, and he had many experiences there.
- Tamaki
- Yeah, we had fun.
—— You visited “Araebisu” that operates to protect Japanese woods and water resources.
- Sakai
- My nephew plays baseball, and he usually gets hooked on watching YouTube. But he went to profound nature spots like mountains to be away from people. He was so excited. His mood was totally different.
- Tamaki
- Yeah, his senses were stimulated.
—— What do you think about playing with given items?
- Sakai
- It is not attractive at all.
- Tamaki
- I was aware of one thing that I was told by the person I met. I agreed with what he said that it is the essential point if grownups are enjoying it or not. Actually, I was more excited than children.
- Sakai
- Really?
- Tamaki
- We shouted “Wow” or “Great!”. I thought it was crucial that adults should show our examples of excited feelings.
- Sakai
- Yeah.
- Tamaki
- After getting off the airplane at Yamagata airport, I paused to open my arms in front of the sign “Yamagata” saying “Here we are!”. And we did it together. I did first, and he followed me to do the same. But if I asked him to stand there to take pictures, he would just stand there.
- Sakai
- As I think about that, there is surely some small entertainment there. To put it bluntly, did you enjoy yourself or not.
- Tamaki
- It was the event I had during my trip, but the point is how you can create your own entertainment for today.
- Sakai
- That’s right.
—— You are free of the opinions of others. It is vital that you feel you are having fun.
- Tamaki
- It doesn’t matter how others feel.
- Sakai
- You are right. I feel we finally get time to focus on the importance of individuals.
- Tamaki
- It looks like people all over the world can be aware right now.
—— Then, we can see your values, the meaning of tamaki niime’s “One of a kind mass productionism” which is a one to one response, one item to an individual.
- Sakai
- We don’t know how the world will change from now on, but I feel our time has finally come.
- Tamaki
- Hmmm. It is not as easy as you say. If it is only a matter of me, it would be easier…, however, we have to run the organization of the company. It is not so easy.
- Sakai
- Take it easy. Think optimistically.
- Tamaki
- Surely I’ve been enjoying working, and believing whatever will be, will be. I am not pessimistic.
—— On the upstairs a little while ago, I watched your staff answering their customers as they ordered “tamasks” on the phone. I thought the way they handled the customers individually were really nice.
- Tamaki
- Yeah…
—— They were not just taking orders, but also they were caring how the customers were doing.
- Tamaki
- Yes, we accept orders by phone, and we’re thinking to have virtual video shopping.
—— That’s a good idea.
- Tamaki
- Since many people quarantined at home have been lonely, we could do something other than meeting customers at the shop.
- Sakai
- It may be true that the people are dependent on entertainment, and gatherings are suddenly left alone, which might make them very lonely.
- Tamaki
- They feel isolated.
- Sakai
- Yeah.
- Tamaki
- On that matter, we discussed that we would respond flexibly with what we could. For example, if we ask customers to shop on our web site, elderly people would complain to us that they don’t know how to use the internet.
—— For the customers who want to enjoy shopping at the real store, we could provide with YouTube videos that our staff have for ordering “tamasks”.
- Tamaki
- That’s right. We need to show people our mask sales at present. We need to let them know what we are doing.
—— That’s an excellent idea.
- Tamaki
- Because the customers can’t come to the store now, we need to send information to them.
—— While our talks continue, the central belief of tamaki niime is unintentionally exposed in these situations.
- Tamaki
- Absolutely, we became unified. So everyone gets excited! Risky conditions unite us. The Coronavirus made everyone feel uneasy. After all, we don’t know what is happening because we can’t see it with our eyes.
—— In other words, we could say it allows us to learn a lot.
- Tamaki
- Even though nobody asks, everybody has to think about it.
—— We can’t help thinking of the ways of how to survive.
- Tamaki
- Because we have real situations, we have to think about it. That’s why it is easier to experiment and try and error for now.
- Sakai
- Yeah.
- Tamaki
- We can try many other ways if one way doesn’t work out.
—— You can take chances.
- Tamaki
- Yeah, we can. Of course, the scenarios I have in my mind are not singular. Whatever situations happen, I try to get answers on each case instinctively. I had no idea to make masks at all a year ago.
- Sakai
- Not at all.
- Tamaki
- Six months ago, however, I told my staff that we would make “something” besides shawls. I declared we would do something creative that would last the next 100 years.
—— You sound like a real prophet.
- Tamaki
- Yes. (laugh) And I asked them to consider it together.
- Sakai
- Yeah.
- Tamaki
- They have kept that suggestion in mind, which must have inspired them to come up with the idea of making masks this time. (speaking to Sakai) Making masks was meant to happen. Ha!
—— Umm…
- Tamaki
- That’s very interesting. In that sense, I think this is what I wanted to do. It was worth preparing for that. We can unify to work full time together.
- Sakai
- Yeah.
- Tamaki
- We were swamped and had a hard time to catch up making “tamasks”, and we needed more people to work. And then Declaration of Emergency was announced, so all the department stores were closed, which was big for us because the staff who worked at the niime section of department stores came back to the factory here.
—— Oh, I see.
- Tamaki
- The shortage of workers was solved, and we could run forward making masks. It looks the timing helps us to make things work, pushing our backs forward.
- Sakai
- Yeah.
—— It depends on how you take things. Don’t you think you are rolling in the right direction?
- Tamaki
- I think so!
—— It is possible to go in positive directions even though in the same hard situations depending on how you take and accept the circumstances.
- Tamaki
- That’s why everyone has possibilities to go in the right directions. We didn’t estimate and plan for the Coronavirus, however what we have been doing is make a small choice for the things in front of us from time to time. It is interesting to see such little choices bring us real results.
- Sakai
- Yeah, it’s interesting.
Original Japanese text by Seiji Koshikawa.
English translation by Adam & Michiko Whipple.